グストイタリア野菜紀行

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episodio33

イタリアの夏バテ防止メニュー 夏季限定のパスタサラダ

 

日本と同様、イタリアにもうだるような暑さがやってきました。
日本のような湿気はないものの、イタリアには地中海ならではの強力な日差しの強さがあります。
“暑い”というよりも“痛い”ほどの太陽熱が肌を刺し、日焼け止め、美白クリームなんて  ごまめの歯ぎしり、焼けつくような暑さがあるのです。
食欲がぐんと低下するこの季節、日本に「そうめん」や「冷麺」「ざるそば」といった夏ならではの冷たいメニューがあるように、イタリアにも毎日のように食べる冷たい料理があります。それはサラダ料理。といっても野菜だけのグリーンサラダではありません。しっかり炭水化物をとって体力を保つべく、パスタや米、麦などに夏野菜をふんだんに混ぜ込んだ、プリモピアット(前菜とメインディッシュの間の料理)としてのサラダです。最も一般的なのが「インサラータ・ディ・パスタ」もしくは「パスタフレッダ」とよばれるパスタサラダです。固めに茹で上げたパスタにトマト、モッツアレラチーズ、バジリコ、黒オリーブの塩漬けなんかを、オリーブオイルと塩コショウだけであえたもの。スパゲティなどの長い麺ではなく、サラダとして食べやすいように具と同じ大きさの“ペンネ”や“ファルファッラ”のような短いショートパスタが使われます。具は好みで何通りものパスタサラダができますが、たとえばタコやイカ、エビなどの魚介類を加えたものも人気です。できあがりをすぐに食べる熱いパスタと違い、パスタサラダは作り置きができるので海水浴の定番のお弁当でもあります。

 

夏に最もイタリア人がよく食べるメニューとして目をつけた【マクドナルドイタリア】では今年、国内最大のパスタメーカー【バリラ】とのコラボで期間限定「インサラータ・ディ・パスタ」(5ユーロ)をメニューに加えました。新メニューのプロモーションでは人気モデルを使い、水着の季節に体のラインを保つためにもライトなパスタサラダを食べようというキャンペーンを打ち出し、全国464店舗でざっと2百万皿を販売予定。

 

パスタの変わりにお米を使った「インサラータ・ディ・リーゾ」も夏には食べない人がいないほどのスタンダードメニュー。具はパスタサラダと同じような材料を使いますが、ちょうど日本のちらし寿司感覚で自分のその時のお好みでトッピング。最近の流行は黒米のサラダ。この黒い米は中国が原産の“リーゾ・ヴェーネレ”という品種をイタリアで栽培したもの。固めに茹でて、ズッキーネやぺペローネ、トマト、エビなどを混ぜ合わせると色鮮やかな一皿になります。

 

小麦やスペルト小麦に夏野菜をあえたサラダもさっぱりと食べやすいポピュラーな夏のメニュー。
プチプチとした茹で小麦に、シャキシャキした野菜の食感が心地よく、私はこれがあると食欲のない暑い日でもむしゃむしゃ食べてしまいます。
  こういった夏のサラダは、茹で上げたパスタ、米、麦に、細かく切った好みの野菜とオリーブオイルを混ぜ合わせるだけなので料理をしたくなくなるような暑い日でも手間いらず、子供でも作れる簡単レシピなところも定番料理となった理由でしょう。

日中温度が34度まであがったある夏日、ローマ中心街にあるレストラン『セッテンブリーニ』のランチへ。お店がある付近はビジネスマンが多く、そのためランチメニューが充実していています。例外にもれず、ここにも彩り鮮やかなサラダメニューがずらりと並んでいました。

 

パスタ、黒米、クスクスからまずは主体となる炭水化物を選びます。そこへ10種類ほどの野菜料理の中から好きなものを選びトッピングしてもらいます。ざくざく切っただけの生野菜、炒めたもの、オーブン焼きにしたもの、茹でたもの、いろいろに調理された野菜がより取り見取り。野菜だけではもの足りないという人にはローストビーフやサーモンやタラのボイルもありました。

 

迷ったあげくズッキーニとニンジン、フィノッキオのスライスをボイルしオリーブオイルと塩コショウであえたもの、それから紫タマネギのオーブン焼き、タラのボイルを選び、お皿に盛った黒米の上にトッピング。あらこれって、ご飯の上に具をのせる日本の“どんぶり”ではありませんか?!

 

味はしっかりついていますが、お好みでしょうゆやオリーブオイルをかけてもOK。黒米はパラパラしていてほとんど米の粘り気がないのでパスタのような食べ応え。トッピング野菜もどれもシンプルな調理法で、かみしめるほどに素材のおいしさが感じられ満足の一品。食欲がなかったのにもかかわらず、キリッと冷えた白ワインと一緒にステキなランチとなりました。

 

季節でスタンダードメニューは変わるものの、野菜をたっぷりと食べるイタリア人の食習慣は年中かわりません。どんな季節料理にもこうやって必ず野菜を盛り込む健康的な食生活の術をぜひ見習いたいものです。

 

ヒサタニ ミカ(野菜紀行レポーター)

京都生まれ京都育ち。
ローマ在住16年。
来伊後、サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、現在は輸入業者のコンサルタント、ワインと食のジャーナリスト、 雑誌の取材コーディネーターとしてイタリア全国に広がる生産者や食に携わるイヴェントを巡る。最近はイタリアでのワインコンクールの審査員も務め、またお 茶や懐石料理のセミナーをイタリアで開催、日本の食をイタリアに紹介する仕事も展開。料理専門媒体にイタリア情報を随筆中。

AISイタリアソムリエ協会正規コースソムリエ。
ラッツィオ州公認ソムリエ。

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