グストイタリア野菜紀行

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episodio46

ピエモンテ州各地でひらかれる真夏のぺペローネ収穫祭

赤、黄、緑。鮮やかな発色の夏野菜ぺペローネ。日本ではパプリカと呼ばれるトウガラシの一種です。ペペロンチーノとともに16世紀ごろ南アメリカから入ってきたといわれています。トウガラシの仲間ですが辛味はなく肉厚で甘いのが特徴。
イタリア全土で生産されていますが、特に勇名な名産地はトリノ南部の地域一帯にあります。ここでは毎年12月末から4月にかけて種がまかれ、7月の末ごろから収獲が始まり、8月は村々でぺペローネの収穫祭が開かれます。

第一弾は8月の1週目に開催されたコスティリオーネ・アスティ村の「第68回モッタ・ぺぺローネ祭り」。

続いて月末にはトリノの南部にあるカルマニョーラ村でも今年で65回目となる収穫祭が行なわれます。
村の広場には色とりどりのペペローネが並べられ、お昼と夜にはぺぺローネを使った地元に伝わる郷土料理が提供されます。「タヤリン(タリオリーノというピエモンテ独特の極細パスタ)のペペローネソース」や「カエルのフライとペペローネ添え」など他の地方ではお目にかかれないものばかり。

最終日の日曜の夜は広場の真ん中でのグリル大会。ペペローネはもちろんのことあらゆる肉も香ばしい匂いをふりまきながら、このお祭りに訪れた人々にふるまわれます。
地元市民の人たちの伝統食材への愛情と、それを後世に残していこうという意気込みが感じられる村をあげての華やかなお祭りはこうしてフィナーレをむかえます。


この地方で栽培されるぺペローネには4つの品種があります。

1「CORNO DI BUE コルノ・ディ・ブエ」
牛の角という名前のぺペローネはスローフード協会のプレシディオ食材にも認定されている貴重な品種。その名の通り、長さが20cmほどあり細長く先がとがった角のような形をしています。赤か黄色で甘いのが特徴。生で食べるか、皮がはがれやすいことからグリルにもむいています。

2「QUADRATO クアドラート」
四角い形をしていて上部には4つか3つの角があります。比較的大きめで赤か黄色で、甘味の中に少し辛味もあります。肉厚なのでオーブン料理やグリルにむいています。

3「TRATTOLAトラットラ」
その名の通りちょうど駒のような逆三角形の形をしています。ぺペローネの肉詰めなどに最適な品種。肉厚なのが特徴。

4「TOMATICOTトマティコット」
こちらは平たく丸みがあり、底に向かって逆三角形のかわいらしい形をした品種。甘味があります。実がしっかりしているのでオイル漬けなどの保存食にむいています。


さてこれらのペペローネ、どんな食べ方があるのでしょうか。
縦長にカットして生のまま食べるピンツィモーニオがあります。
シャキシャキとした歯ごたえでさわやかな甘味があり、ジューシーで塩をつけなくてもおいしくいただけます。
調理したもので、もっともポピュラーなのが「ペペロナータ」。

表面を焼いて薄皮をはがしたペペローネを、ニンニクとタマネギで炒め、トマト、バジリコ、オリーブオイルで煮込んだもの。ねっとり、しっとりとした食感でペペローネの甘味を生かしたボリュームのある一品。私が特に好きなのはペペローネのマリネ。オーブンで焼いて薄皮をはがしてから、オリーブオイルとワインビネガー、にんにくでマリネしたのもシンプルながらねっとりとしたペペローネの甘味がおいしんです。これとワインとパンがあればもう大満足です。

ピエモンテというと白トリュフやポルチーニきのこ、バローロやバルバレスコなどのイタリアを代表する高級食材とワインの名産地として知られていますが、その影にこんな銘野菜も存在してたのですね。
今年の夏は通年より雨が多く、ジメジメと蒸し暑いイタリア。
おいしいだけでなく、ビタミンCが豊富で疲労回復効果があるというペペローネ。
これはもういっぱい食べて夏バテ予防するしかない!

ヒサタニ ミカ(野菜紀行レポーター)

京都生まれ京都育ち。
ローマ在住16年。
来伊後、サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、現在は輸入業者のコンサルタント、ワインと食のジャーナリスト、 雑誌の取材コーディネーターとしてイタリア全国に広がる生産者や食に携わるイヴェントを巡る。最近はイタリアでのワインコンクールの審査員も務め、またお 茶や懐石料理のセミナーをイタリアで開催、日本の食をイタリアに紹介する仕事も展開。料理専門媒体にイタリア情報を随筆中。

AISイタリアソムリエ協会正規コースソムリエ。
ラッツィオ州公認ソムリエ。

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