グストイタリア野菜紀行

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Episodio21

世界最大の『イータリー』がローマにオープン 野菜売り場とベジタブルレストランレポート

もう数年も前から噂されていた『イータリー』のローマ店が6月21日にオープンしました。北イタリアのトリノに本店がある『イータリー』。東京でもすっかりおなじみですが、ここ数年でイタリア国内に7店舗にニューヨーク店と飛ぶ鷹を落とす勢いで店舗を広げています。ローマ店はその中でも世界最大規模で4階建ての総面積はざっと17000㎡!

 

肉や魚、青果などの生鮮食品から瓶詰め製品、加工食品、ワイン、果汁、お菓子、料理本からキッチン雑貨までイタリア中から集められた良品たちがこの広い店内にぎっしり。『イータリー』に一歩足を踏み入れた瞬間みんなが思うのは、今日中にこの店全部見られるのだろうかという疑問。それほど広い食の殿堂にオープン最初の週末は来場者が入りきれなかったのですから、このお店の人気ぶりがわかります。

 

オープンを祝って訪れたナポリターノ大統領が「ここは食のディズニーランドだ」と言ったように『イータリー』はただの厳選食材店ではありません。『イータリー』は最新のマシンを導入した食材の生産工場でもあるのです。ビール、モッツァレッラチーズ、パン、製菓などは店内にガラス張りの工房があり、生産工程を見学しながらできたての商品を購入することができるようになっています。

 

1階の奥にあるベーカリーに隣接した広いパン工房からは香ばしい匂いが漂ってきました。ピエモンテにある、未だに昔ながらの伝統的な石臼で麦を挽いている小麦メーカー「MURINOムリーノ」の粉から作られたパンがどんどん売り場に運ばれてきます。焼きあがりと同時に買い込んでいく人たちが行列に。

 

チーズ売り場のコーナーになにやらすごい行列ができているので見に行くと、豆腐と同じで作りたてが一番おいしい水牛のモッツァレッラ工房があり、そこからミルクがしたたるモチモチの白いモッツアレッラが飛ぶように売れていきます。これはおいしそう!思わず衝動買い。『イータリー』のマーケティングにまんまとはまってしまいました。
さらに『イータリー』の自慢は23もあるそれぞれの売り場にあるテーマごとのイートインコーナー。メニューを通して販売されている食材を味わうことができ、購入した食材のレシピのヒントにも。ここではランチとディナーができ、夜中まであいています。生産、販売、イートインコーナーに料理教室、試飲会などなど、食への興味、食欲がこれほど1つの店舗に凝縮された食の御殿はちょっとほかにはありません。

そしてこのオープンが話題となっているのは、その規模だけではないのです。ローマ市民をあっと言わせた立地場所は、22年前に世界サッカーリーグ戦のためにわざわざ設立された駅。実はここは建設後一度も使われることなく、長年無残に放置されローマ市の社会問題となっていたのでした。その跡地に目をつけたのがこの『イータリー』。開店にあたり600人近い若者を雇用し、この国の不況を逆行するようなビジネス感覚でイタリア中から注目されている経営者オスカーファリネッティ氏。もともと大規模電化製品チェーンのオーナーだったのが今や食品業界の帝王と呼ばれイタリアを代表する事業家として、雑誌や新聞をひらくと必ずこの人の顔が出てくるという話題の人。

そんな『イータリー』の野菜売り場へさっそく足を運んでみました。

 

生鮮食品コーナーは1階の奥にあります。
山積みになっている今が旬のフレッシュ野菜たち。
ここで販売されている野菜はイータリーが専属契約している近郊農家のもの。
ズッキーネやパプリカなどのカラフルな夏野菜には特価がついていました。

 

野菜たちはすでに袋詰めになっているのもあれば、量り売りのものもあり、後者は必要な量だけ自分で袋に入れ、量りで図って値段のシールを貼りレジにもっていくというシステム。“『イータリー』は何でも高い”という噂でしたが青果コーナーはほとんど他のスーパーと変わらない値段。鉢植えのバジリコなどのハーブも種類がたくさん!

 

野菜売り場の中央には、サラダや野菜料理に使えるようにとドライフルーツや香辛料のワゴンがあり、こちらもすべて量り売り。

 

どのカテゴリーの売り場でもこうしていろいろなレシピのアイデアの提案があるのは新しい発見があったりして楽しい。
そして売り場の奥に自家菜園コーナーを発見!ラットゥーガや パプリカ、ナスにネギ、さらにバジリコなどの香草まであらゆる植物が育てられています。

 

スローフードと『イータリー』による地域の子供たちへの栽培教室参加の募集がありました。こういうのも“学んで食べる”というのが基本コンセプトの『イータリー』らしい企画。パックに詰められて売っている野菜が本来はどんな形をしているのか知らない子供はイタリアでも多いのです。
そんな野菜売り場に隣接しているのが“ベジタブルレストラン”。

 

販売されている季節の野菜がサラダやキッシュ、スープなどいろいろな料理になって日替わりでメニューに登場。1皿9ユーロから10ユーロ。ひとりでランチをする人あり、デート中のカップルあり、家族連れあり、客層は千差万別だけど話題のお店でのおいしい食事をみんな楽しんでいるようでした。

 

『イータリー』は今年の春開通した新電車【イタロ】のスポンサーでもあり、食堂車のないこの電車ではイータリーのランチ/ディナーボックスをお弁当として販売しています。『イータリー』は【イタロ】のオスティエンセ駅とも直結しているので、イタリアに訪れる人にはぜひ訪れてほしいスポット。もちろんおなかをすかして行くのが必須です。

 

イータリー ローマ
http://www.roma.eataly.it/index.php
住所:Air Terminal Ostiense
Piazzale XII Ottobre 1492 Roma
Tel. +39 06 90279201

ヒサタニ ミカ(野菜紀行レポーター)

京都生まれ京都育ち。
ローマ在住16年。
来伊後、サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、現在は輸入業者のコンサルタント、ワインと食のジャーナリスト、 雑誌の取材コーディネーターとしてイタリア全国に広がる生産者や食に携わるイヴェントを巡る。最近はイタリアでのワインコンクールの審査員も務め、またお 茶や懐石料理のセミナーをイタリアで開催、日本の食をイタリアに紹介する仕事も展開。料理専門媒体にイタリア情報を随筆中。

AISイタリアソムリエ協会正規コースソムリエ。
ラッツィオ州公認ソムリエ。

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