グストイタリア野菜紀行

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Episodio20

コンセプトは『買う・味わう・学ぶ』
野菜のアンテナショップ「MIA MARKETミア・マーケット」の料理教室

白い壁にところせましと貼られたフルーツや野菜の絵。センスのよい60年代のランプや椅子。古い木のテーブルには作りたてのおいしそうなケーキやキッシュが無造作に置かれています。なんだかおしゃれな友人の家のリビングに招かれたような錯覚におちいるこの空間、実は八百屋さん。

 

ローマはモンティ地区にある「MIA MARKETミア・マーケット」は“KM0(キロメートル・ゼロ)”と呼ばれる地産地消の運動をすすめる女性オーナーのお店。今やイタリア全国に広がるこの“KM0(キロメートル・ゼロ)”は、できるだけ地元の作物を地元で消費、農家と消費者の距離を短くし新鮮で安全性の高い食材を食べようという動き。

 

お店にはそういった近郊農家からのみずみずしい野菜やフルーツをはじめとして、オーガニックパスタやオリーブオイル、トマトソースやフルーツジュースなどありとあらゆる厳選食材を販売しています。ワインは量り売りでなんと1リットル4ユーロ。空ボトルを持ってきて慣れた手つきでワインを入れ持ち帰る人も。そして食材を“買う”だけでなく、お店でそれらの素材を使った料理を“味わう”こともできるイートインコーナーがあります。毎日変わるメニューは野菜のキッシュやサラダ、そして地元産のパンやチーズ、サラミなど素朴だけどおいしく、何よりも10ユーロ(1000円)ほどでランチもディナーもできるといううれしいお手ごろ価格。

 

何十年も前にタイムスリップした台所で食事をしているような気分にさせてくれるステキな古い家具たちもすべて販売しています。

 

「MIA MARKETミア・マーケット」のもうひとつの人気は料理教室。不定期に行われるレッスンのテーマは野菜を使ったシンプルな料理。今どき珍しく参加費は無料!

 

5月のレッスンはアンジェラ先生の『野菜のペースト』。ペーストといえばバジリコとパルミジャーノチーズ、松の実、オリーブオイルからつくられた“ペースト・ジェノヴェーゼ”が有名で、よく瓶詰めのものがどこのスーパーでも販売されています。

 

茹でたパスタにからめたり、そのほかブルスケッタ(グリルしたパン)の上に塗って前菜にしたり、茹でたポテトにあえたりと、手軽においしい料理ができるのでイタリア人の食卓には欠かせない万能選手。
 今日はアンジェラ先生のレシピでルーコラ・セルバーティカ、プレッツェーモロ、ドライトマトのペースト3種類を作りました。

 

レッスンの開始時間はなく来た人からはじめるというなんとも適当なスタンス。レシピ、材料の分量を書いたレジュメもなく、料理教室というよりも料理上手のマンマに家で自慢レシピを教えてもらうようなノリ!さてこのペースト、フードプロセッサーなんてナンセンスなものは使いません。すり鉢とこん棒。すり鉢に入れた材料をトントンと思い切りたたき、ゴリゴリと根気よくすり続けながらクリーム状にするのが手造りペーストの醍醐味なのです。

 

ペーストのレシピ
1) ルーコラ・セルバーティカと黒オリーブ、ケイパーのペースト
材料 :
ルーコラ・セルバーティカ (あらかじめ細かく手で切っておく)
アーモンドの実
ケイパー(水につけて塩を抜かなくてもよい) 
塩漬け黒オリーブ(種なし)
にんにく
エクストラヴァージンオリーブオイル
作り方:
1 上記の材料をペースト用すり鉢でひたすらペースト状になるまですりつぶす。
2 オリーブオイルがかぶるくらいたっぷりといれペーストを伸ばす。
3 熱湯で殺菌しておいた空き瓶に入れ保存する。
(オリーブオイルがかぶるくらいにならないと表面が乾燥しておいしくなくなるので
オイルはおしげなくいれる。)
レモンを足してもよいし、にんにくの匂いが気になる人は入れなくてもいい。
すべてはお好みで適当に!

2) ドライトマトとにんにくのペースト

材料 :
ドライトマト(皮ははがして細かく切っておく)
バジリコ
ヘーゼルナッツ
アンチョビ
にんにく(細かく切っておく)
エクストラヴァージンオリーブオイル
作り方は1)に同じ。

3) プレッツェーモロのペースト
材料 :
プレッツェーモロ(あらかじめ細かく手で切っておく)
松の実かアーモンド
レモン
岩塩
こしょう
エクストラヴァージンオリーブオイル
作り方は1)に同じ。

 

材料の量は味をみながらお好みで調節。オレンジの皮のすりおろしを入れてみたり、ペペロンチーノをいれてみたり、醤油を加えたり。アイデアしだいで世界で一つのオリジナルレシピができるのがペーストの楽しいところ。パスタは熱々でも冷製にしてもOK。ペーストをたっぷりとからめたパスタを盛りつけ、上からすりおろしたパルミッジャーノチーズをかけるとさらに美味。生のほうれん草やセロリの葉のペーストというのもルーコラやプレッツェーモロと同じ要領でできます。「冷蔵庫のあまりものをかき集めて、その時の気分で自分のオリジナルのペーストを作るのが楽しいんです。遊ぶように料理してみて!」とアンジェラ先生。どのペーストにも最後にエクストラバージンオイルをたっぷり入れるのが秘訣。おいしいだけでなくペーストをしっかり保存してくれます。
この方法だと冷蔵庫で1週間以上は十分もちます。

 

クラシックジャズの流れる店内で、若者から老夫婦まであらゆる世代の人が時間を忘れて買い物し、味わい、学び、おしゃべりしていた「ミア・マーケット」。
これからもしょっちゅう通いたいな!

MIA MARKET ミア・マーケット

http://miamarket.blogspot.it/

  Via Panisperna 225 Roma Tel. 06 47824611

  Via Marche 29 Roma Tel. 0645423391,

  Via Lucio Papirio 29 Roma Tel. 06 71510455

ヒサタニ ミカ(野菜紀行レポーター)

京都生まれ京都育ち。
ローマ在住16年。
来伊後、サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、現在は輸入業者のコンサルタント、ワインと食のジャーナリスト、 雑誌の取材コーディネーターとしてイタリア全国に広がる生産者や食に携わるイヴェントを巡る。最近はイタリアでのワインコンクールの審査員も務め、またお 茶や懐石料理のセミナーをイタリアで開催、日本の食をイタリアに紹介する仕事も展開。料理専門媒体にイタリア情報を随筆中。

AISイタリアソムリエ協会正規コースソムリエ。
ラッツィオ州公認ソムリエ。

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「ヒサタニミカのイタリア食道楽」

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