Episodio14
ローマ旧市街の人気地区モンティにオープンしたばかりのハーブ専門店『アロマティクス』。経営者はまだ30代はじめの若いカップル、ルカ・デ・マルコ氏とフランチェスカ・ロンバルディさん。「香草というのは脇役的な存在に見られていますが、実は料理にもお菓子にも、そしてドリンクにもものすごく大きな役割を持っているんです。ハーブを使うことによって手軽においしく洒落た一品ができることをもっとみんなに広げたいと思いこのお店をオープンしました。自分の料理人としての経験を生かしハーブをつかった面白いレシピもどんどん提案していきたいですね。」というルカ氏は10年間ローマの星つきレストランで働いていた元シェフ。相棒のフランチェスカさんはマルケ州の有名店でソムリエをしていたという、世才とやる気あふれるカップル。
『アロマティクス』では56種類の鉢植えハーブを販売。1鉢5ユーロ前後という手ごろな価格。店内を訪れるお客さんたちにそのハーブの栽培方法からどんな料理に使えるかまでひとつひとつ丁寧に説明してくれる。
-アッセンツィオ
このまま食べるとかなり苦く、舌を刺激する。イタリアではグラッパやベルモットなどの食後酒のアロマの材料として使われる。古代では疲れを取る薬草として使用されていた。
-アニチェ
“アニセッティ”というリキュールの原材料。ミントのような味わい。パンやクッキーの生地にアニチェの種を混ぜ込んだものはどこのパン屋さんにでもある。抗不安薬として消化の助けとして古代から愛用されていた薬草。
またガーデニングに興味のない人も、その道具をそろえるために自家菜園を始めたくなるようなグッズの品揃え。広い庭がなくとも家の中で栽培できるように工夫されたデザインで、インテリアの一環として買っていく人も。
『アロマティクス』ではハーブや自家菜園グッズの販売だけではなく、香草を使った料理をその場で味わうこともできる。免許の関連でまだレストランとしての営業はできないが、店内にはイートインコーナーがありランチのみ営業。ルカ氏によるハーブをふんだんに使ったシンプルかつカジュアルなサラダや肉、魚料理が堪能できる。「自分でコツコツ育てた香草を料理に使うのもまた一味違うんですよ。たとえば同じオレガノでも一般に販売されているのは袋入りの乾燥したものですが、植木から摘み取ったフレッシュのものを使うと同じ料理でもまったく違う新鮮な、より広がりのある味わいになります。一度フレッシュハーブを知ると乾燥ものは使えないですね。」
「料理人時代に日本人の同僚に出会い彼からいろいろ和食を学ぶことができました。彼が今どこでどうしているかわからないけれど、こうやって今シソやかいわれ大根を使って和のテイストをミックスした料理を提供できるのも彼のおかげです。」と手際よくお店のハーブを摘み取って奥にある厨房で腕をふるうルカ氏。「ハーブ専門店と香草料理を出すレストランが一つになったお店、イタリアでもここだけなんですよ。」とうれしそう。
サラダやタルタルはオリーブオイルとレモン、塩だけであえたり、手造りドレッシングであえたりと素材の個性をできるだけ引き立てるシンプルな味付け。ドリンクはソムリエであるフランチェスカさんのセレクトしたイタリア産地ビールにワイン。人気の秘訣はおなかにも財布にもライトなところ。
自家菜園の入門に、新しいレシピのヒントとして、お菓子のアクセントに、手造りリキュールに、部屋をみずみずしくするインテリアに、そして大切な人へのプレゼントとして。『アロマティクス』から発信されるオリジナリティあふれる新しいハーブの使い方。これからも新しいアイデアを盗みにちょくちょく訪れたい。
ショップデータ:
AROMATICUS アロマティクス
Via Urbana 134 Roma
Tel +39 064881355
http://www.aromaticus.it/
営業時間10:00-21:00
日曜定休
ヒサタニ ミカ(野菜紀行レポーター)
京都生まれ京都育ち。
ローマ在住16年。
来伊後、サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、現在は輸入業者のコンサルタント、ワインと食のジャーナリスト、 雑誌の取材コーディネーターとしてイタリア全国に広がる生産者や食に携わるイヴェントを巡る。最近はイタリアでのワインコンクールの審査員も務め、またお 茶や懐石料理のセミナーをイタリアで開催、日本の食をイタリアに紹介する仕事も展開。料理専門媒体にイタリア情報を随筆中。
AISイタリアソムリエ協会正規コースソムリエ。
ラッツィオ州公認ソムリエ。
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