グストイタリア野菜紀行

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Episodio12

ローマ最大の中央青果卸売り市場  夏レポート

ローマ郊外はグイドニア地区にある中部イタリア最大の中央卸売り市場。もともと市内の中心部にあったのも、ローマ最大の社会問題である渋滞のために商品流通に支障をきたすということで8年前に郊外のグイドニア地区に移動。青果コーナーだけでも45000㎡の広さを誇るこの中央市場は首都圏の食生活をまかなう生鮮食料品の流通の一大拠点に発展し、ラッツィオ州全体の食材の供給元となっています。
  この市場、一般の人は立ち入り禁止のため入場許可を得る申請が必要。イタリアでは例えこのような単純な手続きでも何ヶ月という時間を要します。そこでここの出入り業者である知り合いの八百屋さんにお願いして中央市場の本部に話をつけてもらうことに。まさにコネ社会のイタリアらしい話ですが、ほんとうにこんな場所においても有力者の根回しなしには何もできないのがイタリア。

さて八百屋のおじさんのおかげで数日後には許可を得、さっそくカメラ片手に市場の中へ。どんな食材があるのでしょうか。
夏期は日中は暑くなるために夜19時から夜中2時という時間帯で取引が行われます。
ラッツィオ州やアブルッツォ州から集まった120軒の農家が店を連ねます。到着するとローマ弁でやりとりする業者のおじさんたちの威勢のいい大きな声が聞こえてきました。

市場をカラフルに彩る「フィーキ・ディ・インディア」と呼ばれるインドいちじく。これはサボテンのふちにできる鮮やかなオレンジやピンクや実なのですが、なっているものはサボテンの針が実の周りにもたくさんついています。普通は手袋をして皮を剥き、中の実を食べるのですが市場に出回っているものはすでに全て針が取られた状態で売られていました。今はこの針だけを取る機械というのがあるそうです。さてこのシチリアはカターニャ産の果物、りんごと柿が混ざったような味。南イタリアのシチリアやプーリアでは大量に生産されています。

この時期本当にたくさん出回っていたメロンたち。皮が黄色のものはシチリア産、緑のものはサルデニア産、大きさも大小いろいろな形がありますが一応に中身は白い実なのです。これは夏にとれる果実ですがかなり皮が硬くしっかりしていて、南イタリアでは納屋につるしクリスマス時期にも食べる習慣があります。

最近売れ行きが悪いのが「ココメロ」=スイカだそう。市場でもたくさん余っているとのこと。イタリアでも夏といえばスイカなのですが、持ち帰るのに重たいことなどからあまり人気がないとのこと。そこで作られたのがこのミニスイカ。「ベビーココメロ」という愛くるしい名前がついていました。野球のボールを一回り大きくしたくらい。味はもちろん大きなスイカと全く同じ。

イタリアでも「KAKI」という名前で出回っている柿。産地はカンパーニャ州。こちらでは日本のように固いままでなくかなり熟してやわらかくなったものを食べます。

ブドウもこの時期にたくさん出回る果実。赤ブドウ、緑のブドウ、実が丸いもの、尖ったような細長いものいろいろな品種があります。こちらは尖ったという意味のある「ピッツテッロ」というローマ産。甘い!

アブルッツォ州の白イチジク。この果実はよく前菜として生ハムと食べます。少し熟した甘いいちじくと生ハムの塩辛さの相性が抜群。白ワインがよくあうのです。

色とりどりの木イチゴはピエモンテ州クーネオのもの。

いろいろな形の「ぺペローネ」たちに出会いました。辛いものも辛くないものもあります。とんがった小さい物は「コルネーティ」、丸いのはよく肉詰めにして食べる「キオッキエレ」。緑のしし唐を大きくしたようなものはあまり辛味はなくオリーブオイルで炒めて食べます。全部ナポリ産。ナポリでは唐辛子は魔よけのお守りなのでよくコルネーティを模ったキーホルダーなんかを持っている人がたくさんいます。

中央市場の中心あたりのところで八百屋と八百屋の間に突然表れた異空間。なんと教会がありました。時々ミサが行われて業者の人たちが参列するそう。今まで駅の構内とかで見たことありましたが中央市場にまで!やっぱりキリスト教の国なんですね。

イタリア料理に欠かせないハーブ。農家のおばあちゃんが毎日自分の野原で摘んでくるというハーブたち。

フェンネル

ローズマリー

ミント

「ボッラージネ」。ちょっとバニラっぽい後味。これはこのまま葉っぱをフライにして食べます。

野生種の野原の香草ミックス。サラダに入れて生で食べます。

これは珍しい香草「エルバステッラ」。クセのある苦味あり。

ちょっとミントっぽい「ピンピネッラ」。これもあまりみかけない珍しい香草。

あらら!白いナス!あまりにも紫に見慣れているので違う野菜に見えますがこれは列記としたナスです。なぜか「タンゴ」というネーミング。ローマ産。

こちらも同じく白いナス。丸い形から 「メランザーネ・ウオーヴォ」卵ナスという名前。確かに卵みたい。普通のナスよりも硬いところも卵みたい。

「ストリアーテ」縞模様の、という意味のある名前をもつ縞々のナス。

そして細長い「メランザーネ・ルンガ」。アジアの品種だそう。

“真珠”という意味の名前ひとくちナス「ぺルリーノ」。これはエジプトでオイル漬けにして食べられているナスだそう。お漬物にしてみたいな。

飾り用のかぼちゃ。プラスチックで作ったおもちゃみたいな面白い形がいっぱい。

巨大かぼちゃ。日本の栗かぼちゃよりも水っぽい。そろそろかぼちゃのリゾットの季節。

ローマ料理に欠かせないカボチャの花。大体収穫後1日は花がこの状態でもつそうです。中にモッツァレッラとアンチョビをいれてフライにしたものはピザ屋さんの定番メニュー。

大量に出回っていた「フィノッキオ」。どこの市場でもみかける定番野菜。サラダにしたりグラタンにしたり。

青々しい「ブロッコレッティ」。茹でてオリーブオイルとにんにくで炒めます。

「ヴェルデ・ディ・マチェラータ」。まだ時期が早いせいか1ケースしか見かけませんでしたが秋が始まる10月あたりからはたくさん出回ります。茹でたりフライにしたり。イタリアの食卓に欠かせない人気野菜のひとつ。

アフリカ産のオレンジ、アルゼンチン産のレモン、ブルターニュ産のアーティチョークにブロッコリと輸入野菜も多くみかけられました。ローマという観光客が多い土地柄、その作物が全く収穫できない時期でもレストランでは1年中ローマ野菜のメニューを提供するため、あたかも地元産のようにあらゆる野菜や果実を輸入する業者が増えています。とはいえ、旬ものにうるさいイタリア人。彼らの食卓を彩る色とりどりの季節の作物がこれでもかというほど市場を埋め尽くしていました。
来月には栗やいろいろな種類のきのこなども出回るそう。また秋のレポートお届けいたします!

ヒサタニ ミカ(野菜紀行レポーター)

京都生まれ京都育ち。
ローマ在住16年。
来伊後、サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、現在は輸入業者のコンサルタント、ワインと食のジャーナリスト、 雑誌の取材コーディネーターとしてイタリア全国に広がる生産者や食に携わるイヴェントを巡る。最近はイタリアでのワインコンクールの審査員も務め、またお 茶や懐石料理のセミナーをイタリアで開催、日本の食をイタリアに紹介する仕事も展開。料理専門媒体にイタリア情報を随筆中。

AISイタリアソムリエ協会正規コースソムリエ。
ラッツィオ州公認ソムリエ。

[ イタリアからお届けする旬の食コラム ]

「ヒサタニミカのイタリア食道楽」

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