episodio37
2008年にコルディレッティ(イタリア農業生産団体)が【カンパーニャ・アミーカ】というプロジェクトを全国各地で始めてから、もう5年になりますがその人気は景気後退の中、右肩あがりに上昇しています。【カンパーニャ・アミーカ】の目的は、生産者だけでなく消費者も一体となって、農業の振興と地域の発展、さらには環境負荷の削減をめざそうというもの。具体的には下記のようなプロジェクトを掲げています。
・メイド・イン・イタリーの伝統・郷土食材の保護。
・「KMゼロ」と呼ばれる地産地消の助長。
・有機食品、ビオ食材など安全な食材の推進。
・仲介業者など無駄なコストを省いたグループ買い(Gruppo di Acquisto Solidale =GAS)の推奨。(スーパーには卸せないような・小さな生産者を保護し、消費者側も安価で食材が手に入るという一石二鳥のシステム)
・アグリトゥーリズモ(農家が経営する農園ホテル)での滞在型バカンスのプロモート。
・市民による都市での自家菜園設置。これを通じて子供の食育、地域の高齢者の交流の振興を図る。
このように多種多様な農業の新しいビジネスを生み出し、農業家を保護し、さらには若い層の農業家を増やす活動を行なっているのです。このプロジェクトは大きなムーブメントとなって【カンパーニャ・アミーカ】と名つけられた直販市は今や全国に7000という数にまで増えています。
すがすがしい秋空の広がる日曜日、ローマのチルコマッシモ広場にある【カンパーニャ・アミーカ】へ秋の野菜レポートに行ってきました。
ここでは家族経営、夫婦経営の小さな生産者が多く、いかにも今収獲してきたばかりといった土がいっぱいついているジャガイモやにんじんがごろごろしています。
10月あたりからロマネスコやカーボルフィオーレ、キャベツなどが出回りはじめます。今ではこれらの野菜を見ると毎年「あ、もう秋だなー」と思うようになりました。
プンタレッレです。プンタレッレとはローマ独特の野菜で、ナイフで削ぎとって販売されていますが、これはチコリの茎の部分。オリーブオイルとにんにく、アンチョビを刻んだものであえてサラダにして食べます。ちょっと日本の高菜に似ていると言った友人がいましたが、確かにパリパリとした歯ごたえがありお漬物にもできそうな野菜です。このパリパリ感とみずみずしさがおいしくて誰もが虜になるおいしさです。
秋といえば栗。イタリアではオーブンでローストして焼き栗にして食べる人が多いです。このところイタリアでは栗農園が害虫被害で生産量が減っており、価格が高騰しています。それでもみんな大好きなので高くとも少量買っていくようです。
こちらも秋には欠かせない食材。きのこ。ローマ近郊の森林でとれたもの。
オリーブオイルで炒めパスタに絡めて食べたり、シンプルなグリルにしたり。
ハーブ屋さん。多種多様で近くを通るといろんな香りが漂ってきます。
今や家庭で自家栽培するのもポピュラーになりました。
かぼちゃは日本のものより水っぽく、炒めてリゾットに入れるのが一般的。
【カンパーニャ・アミーカ】市では野菜だけでなく、チーズやサラミなどの加工肉類、ハチミツ、ワインなんかもあるんです。
行列がでいているのはポルケッタと呼ばれるローマの郷土料理、豚の丸焼き。豚のお腹にローズマリーやタイム、ローリエなどの香草をいっぱい詰めて、丸ごとローストしたものですが、これを薄切りにしてパンに挟んで食べるのは昔から伝わるローマのストリートフード。今でこそお洒落なストリートフードが流行していますが、ポルケッタはその元祖とも言うべき食べ物。
最近ブームのクラフトビールの生産者までこの直販市に参加しています。
オリーブオイルやハチミツ、パテを売るお店は必ず試食コーナーがあり、消費者が納得してから購入できるようになっているのも魅力の一つ。
【カンパーニャ・アミーカ】のエノテカ(ワインショップ)もありました。ラッツィオ州の小さなワイナリーのワインがずらり。ラッツィオ州のワインといえば安価なテーブルワイン<フラスカーティ>が知られていますが、チェザネーゼ種やメルロ種を使ったエレガントで高級感のある赤ワインもかなり出てきています。ここでは試飲してから購入できるので安心。
【カンパーニャ・アミーカ】市では、市場の食材で料理された郷土料理のランチを提供しています。1皿5ユーロの料理とテーブルワインのランチセットを屋外に用意されている大テーブルで食べることができます。
ランチの売店では長い列ができているにもかかわらず、じりじりと忍耐強く列に並んでいるロマーノたち。いつもは短気な性格なのに、おいしいもののためには行儀よくできるところが笑っちゃいます。
この日のメニューはペンネ・アッラビアータ(パンチェッタとペペロンチーノ入りのトマトソースを絡めたショートパスタ)と自家製ソーセージ、仔牛の煮込み、チコリのリパッサータ(一度茹でてからオリーブオイルとにんにくで炒めたもの)、インゲンのリパッサータ。
朝早く【カンパーニャ・アミーカ】に来て1週間分の買い物をし、ここでゆっくりおいしい地元の産物を家族や友人同士で食べるというのが一つの週末の過ごし方になっているのです。
データ:
コルディレッティ【ローマ・カンパーニャ・アミーカ市】
Via San Teodoro 74 Roma
土曜日:9:00-18:00
日曜日:9:00-16:00
http://www.mercatocircomassimo.it./
http://www.campagnamica.it/
ヒサタニ ミカ(野菜紀行レポーター)
京都生まれ京都育ち。
ローマ在住16年。
来伊後、サントリーグループのワイン輸入商社のイタリア駐在員事務所マネージャーを経て、現在は輸入業者のコンサルタント、ワインと食のジャーナリスト、 雑誌の取材コーディネーターとしてイタリア全国に広がる生産者や食に携わるイヴェントを巡る。最近はイタリアでのワインコンクールの審査員も務め、またお 茶や懐石料理のセミナーをイタリアで開催、日本の食をイタリアに紹介する仕事も展開。料理専門媒体にイタリア情報を随筆中。
AISイタリアソムリエ協会正規コースソムリエ。
ラッツィオ州公認ソムリエ。
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